Delizia al Limoneと書いて「デリツィア・リモーネ」と聞こえてくるこのお菓子は、南イタリアのソレント半島一帯でブームになっているデザートである。 | |||||||
1997年夏、南イタリアでたまたまこのお菓子を口にした時、驚いた。なぜなら日本にいると毎日ケーキを食べたくなるケーキ好きの私がイタリアに居る間はその癖がぱたりと止む程美味しいデザートに滅多に出くわさないからだ。まず、目にした時に感動があった。なんとも愛くるしい。ドーム型の外側にかかっているクリームが、ソースとクリームの中間のような、今迄に見たことがないようなクリームで、それがなんとも美しい艶を放っていた。今までに食べたことのない、このなんとも形容しがたいクリームにとても魅かれた。そして食べてみて冒頭に述べたように「驚いた」訳である。実に美味しかった。あっさりしていて軽く、食後であるにもかかわらずペロリと食べれてしまうのである。Deliziaとは辞書をひくと歓喜、悦楽、歓びを与える物、楽しくするものとある、まさにその名にふさわしいデザートである。 当時はこのデザートがまさか"流行っている"お菓子だとは想像しなかった。単に「美味しいデザート」ということでデリツィア・リモーネがとても気になる存在になった。 | |||||||
このデザートの生まれ故郷がソレントであろうという情報を後に得て、現地での情報収集を始めた。調査をすればするほどどんどん面白いことがわかってきた。ナポリ以南サレルノにかけてのソレント半島一帯で「流行っている」お菓子なんだということがこの時徐々に見えてきた。ナポリのババと同じようにソレントの伝統菓子かと思いきや、このデザートの開発者が未だ現役の菓子職人であることもわかった。調査の途中「我こそが生みの親だ」と名乗る人物が複数出てきて彼らに惑わされながらも、カルミネ氏が本当の生みの親であろうことをつきとめた。 | |||||||
現在ソレント菓子協会の要職を担うカルミネ氏が若かりし頃、風光明媚なこの地の有名ホテルでパティシェをしていた折、地元特産のソレント・レモンを使ってホテルのお客様に喜んで頂ける食後のデザートを作りたいとの思いで日夜試行錯誤の末できあがったのがデリツィア・リモーネであった。肉厚で非常に香り高いこの地のリモーネ(レモン)と乳製品とのかけあわせのデザートを作りたかったのだという。その後弟さんがシェフを勤めるレストランでデザートメニューに加えたところ、地元の大評判となり | |||||||
いわゆるブームの源を作った。老舗レストラン、フランチスキエロがデリツィア・リモーネ発祥のレストランと呼ばれる由縁である。 この後、世界的に有名なヴァカンス地であるポジタノ・アマルフィー等が点在するソレント半島の海岸線沿いに伝染するかのように広まっていったのである。おそらく皆、評判のこのデザートをこのレストランに食べにきては自分のレストランに帰って再現したのであろう。 |
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現在この地域ではおびただしい数のレストランでデリツィア・リモーネを出しているが、生地やクリームの部分等少しずつ違うのは、おそらく書かれたレセピーが無い中で記憶や想像を頼りに作り上げていった為ではないかと推測する。 当初レセピーをいくら探しても出てこなかった。やっと見つけたのがこのホームページでも紹介しているソレントの若手菓子職人アントニオ・カフィエロ氏の書いた本である。(書籍紹介コーナー:「南イタリアお菓子の本」) |
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私の調べた範囲では、Delizia al Limoneのレセピーとしてイタリアで書かれたものは今のところこの本の存在のみのようである。(注:インターネット検索をするとヨーグルトを使用したレセピーが出てくるがこれは似て非なるもので、ここで述べるいわゆるオリジナルの「デリツィア・リモーネ」ではない。) カフィエロ氏の本が最初に出版されたのは1993年のことなので、それまでの20年余りはレセピーの存在しない中で前述の様に徐々に口コミで広まっていき、そしてこの本の出版の後にブームに拍車がかかったのであろう。 | |||||||
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具体的地名としてはソレント、ポジタノ、アマルフィー、サレルノ、カプリ並びにその近隣全般である。ナポリではあまりお勧めしない。(ナポリではババ等その地の伝統菓子を召し上がる方がよい。) 召し上がる際の注意点がある。時間が経ってクリームの艶を失ってしまったものは見た目にも魅惑的でないが、食べてもやはりがっかりである。 |
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短い滞在中に理想的なデリツィア・リモーネに出会えるのは難しいことかもしれないが、判断基準は外側のクリームの艶状況である。自家製で作っているレストランばかりとは限らない。近所のお菓子やさんから購入して供しているレストランが多い中、下手をすると昨日のものだったりすることが往々にしてある。美味しさは断然違う。御試食の際は是非フレッシュ感のあるデリツイア・リモーネを!非常にデリケートなお菓子でもあるのだ。 | |||||||
日本では未だなかなか本物に近いものが食べれないが、最近東京・恵比寿にあるイタリアンレストラン、イル・グラッポロ(TEL:03−3449−8561)で非常に近いものが完成したのでこちらをお勧めする。今日現在私の知る限りで最も現地に近い唯一のものである。いつもあるとは限らないので、要予約。食後のデザートとして注文できる。
2000.2.24
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