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画像2Limoncelloとは南イタリアのアマルフィー海岸、ソレント半島、カプリ島付近一帯の伝統的食後酒で、アルコール度数が通常30度以上と高く、甘く、地中海のレモンの芳香が楽しめるリキュールである。元々は各家庭が庭のレモンをとってはアルコールに漬け込んで常備する日本の梅酒的存在であったが、この地が有数の観光地であった為訪れる北イタリアや他のヨーロッパの人々が滞在中にリモンチェッロの味を覚え、ヴァカンスが終わり家に戻って地元のお酒屋さんに尋ねるがどこにも売っていない、送ってもらえないだろうか、との手紙や電話が当時少なかったこの地の生産者に寄せられることになり、火がついて全国的にひろまり、今日ではイタリア中どこへ行ってもレストランやバール、スーパーでみかけるようになった。
因みに、日本でリモンチェロとか、レモンチェッロ等と紹介されているのを見かけるが、正しくはモンチェロと発音する。


Limoncelloの見分け方

画像3全国的にブームになると雨後の筍のように生産者が現れ、果てには北イタリアでグラッパを作っていたところ迄がリモンチェッロを売り出すようになった。イタリアでのブームを受けて近年日本にも入ってきているが、玉石混交状態なので、商品の見分け方について少々触れてみたい。現状リモンチェッロは大きく分けて3つのカテゴリーに分類できる。まずは天然ものと香料/着色料を使用した工業製品タイプに大別できる。
Aromi Naturali(香料)とかcolorante(着色料)という言葉をボトルのラベルに見かけたら香料/着色料使用タイプである。次に天然物も二つのタイプに分類できる。いわゆる本場物とそうでないものである。本場物とは冒頭に述べた地域で生産されているものであるが、この地域のレモンは我々のレモンとは似て非なるものだと思って頂いたほうがわかりやすい。リモンチェロのブームに感化されて、レモンを産出する他の地域、例えばシチリアやカラブリア等で地場のレモンで作ってLimoncelloとして売り出しているが、実は本場アマルフィー、ソレントのレモンはシチリアレモンとは“別物”なのである。この点は詳しく後述する。

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Limoncelloの飲まれ方・飲み方

画像5イタリアには食事の後でアルコールの強いお酒を飲んで食事を締めくくる食後酒(digestivo/liquore)の習慣がある。リモンチェッロはイタリアではグラッパ同様食後酒と認識される。冷凍庫でキンキンに冷やしたもの(アルコール度数が高い為凍ることは無い)をリキュールグラス等で少量キュッと頂く。食後酒はdigestivoと呼ばれる位なので,タリア人は消化を助けると考えているようである。真偽の程はよくわからないが、パスタやメインをたらふく頂いた後にキンキンのリモンチェッロを頂くと、確かにすっきりする。特に魚料理の後など生臭さをレモンの香と強いアルコールが一気にかき消してくれる。昼食の後ならこのままお昼寝になだれ込むのが最も幸せな飲み方である。日本ならさしずめナイトキャップといったところだろうか。もっともお膝元の南イタリアでは、食後に限らず昼日中でも来客に振る舞ってもてなしたりもしている。日本でもこれだけ本格的なイタリアンが充実してきたので、食後酒というものがもう少し注目されてもよいように思うのだが、日本には食後に強いお酒を飲む習慣がないので難しいらしい。日本ではカクテルにした方がどうも馴染みやすいらしい。お勧めのカクテルは白ワインで割る、スプマンテで割る、さらにそこにカンパリを少量落とす、ミルクで割るとカルーアミルク的な面白いカクテルができる、勿論ソーダで割ることもできる。食にルールは無いとは思うが、あくまで正当イタリアンを貫きたい方はこの際是非、食後酒の楽しみ方を味わって頂きたい。


Limoncelloの成分と製造法

天然物のリモンチェッロはレモンの皮とアルコールと水と砂糖のみからできている。レモンの皮をむいたものを95度〜96度の純粋アルコールに1週間程度漬け込み香と色を抽出したものを砂糖水で割って32度〜34度程度におとす。シンプルなだけに、一つ一つの素材のクオリティーがストレートに風味に反映される。特にレモンが重要である。よく、日本でも自家製でできるとおっしゃる方がいるが、「レモンのリキュール」はできるかもしれないが、それはLimoncelloの風味ではない。日本ではソレント、アマルフィーのレモンが手に入らないのと、95度のアルコールも市販されていないからである。ウオッカやグラッパに漬けたのではリモンチェッロの風味にはならないのである。イタリアでは酒屋さんで95度の純粋アルコールが一般に市販されているのである。


Limoncello本場地域のレモンに関して

画像7まずは右の写真を見て頂きたい。右側のレモンは我々が慣れ親しんでいるサンキストレモンで、左側のレモンはアマルフィー海岸産のレモンである。一目瞭然だが、アマルフィーのレモンは実が大きく、皮が厚くごつごつしていて、香が大変高い、芳香を放つレモンである。この地のレモンは生産量が少なく希少性が高い。イタリアで八百屋やスーパー等で全国的に流通しているレモンは生産量が最も多いシチリア産レモンであるが、Limoni della costiera Amalfitana/Sorrentina(アマルフィー、ソレント海岸産レモン)はそのほとんどは地元で消費され、あとはリモンチェッロに姿を変えて我々の手元に届く位で、イタリアの他地域で流通することは希で、例えば北のミラノあたりでこのレモンを入手しようとするとシチリア産レモンの倍位の値段となる。本場地域のリモンチェッロメーカーの中でも、コストを下げる為にシチリア産のレモンを混ぜて使っているところがあるという噂を耳にしたことがある。因みにシチリア産のレモンは上の写真のサンキストレモンに近い。ついでに書くなら、シチリア産レモンはどちらかというと果汁の為のレモンであり、アマルフィー・ソレントのレモンは果汁もさることながら、皮の使い方にその独特性があるレモンである。リモンチェッロは皮のみを使い果汁は一切使わない。従って、レモンの香は非常に漂うのに、酸味がない。そして乳製品との相性も良いのである。



お勧めの本場リモンチェッロ

1993年夏カプリ島のホテルで初めてリモンチェッロを知って感動して以来、その魅力にとりつかれ、Limoncelloに関する情報収集を行い、日本にも本場の美味しいリモンチェッロを、と数年に渡り調査を重ねて到達した2社を紹介したい。日本では付記の各社に取り扱って頂けることになったので、現在入手可能となった。

マテルドミニ社“RUSSO”のリモンチェッロ
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上記アマルフィーのレモンの写真はまさにマテルドミニ社のリモンチェッロに使われているレモンである。香料、着色料、保存料等の添加物を使用しない天然ものであるにもかかわらず、小規模経営がほとんどの同地域の中でも量産体制の整っている数少ないメーカーの一つ。ボトリング等の作業は機械化しているものの、レモンの皮むきは手むきにこだわり、敢えて人手でむいているのが美味しさの秘訣だという。日本では、マイヤーズラム、キルシュワッサー等をてがけられたリキュール専門の(株)宏洋さんで扱って頂けることになった。

問い合わせ先:
宏洋コウヨウ株式会社 TEL: 03-5733-3900
       URL: http://www.koyo-inc.com/

 

コンヴェント社“IL CONVENTO”
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ソレントレモンの中でも非常に良質のレモンを産する地域として名高いマッサルブレンスで100年間レモンの栽培を手がけているコンヴェント社が代々伝わる秘伝のレシピでレモン園内の工房で作るほとんど手作りの自家製リモンチェッロ。値段ははるが、天然、本場ものの中でも別格的存在である。日本ではイタリアワイン専門のインポーターであるエトリヴァン社により昨年から輸入が開始され、既にこのリモンチェッロのファンが形成されつつある。エトリヴァンさんは通常イタリアンレストランにワインを卸してらっしゃるが、個人の方でも相談にのってもらえる。

問い合わせ先:(有)エトリヴァン TEL: 045-574-9815


次回はリモンチェッロを使ったお菓子や応用商品をご紹介します。

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